映画 3月のライオン ビジュアルブック (白泉社ムック)


 観てきたので感想を書く。基本はネタバレあり。

端的に言って、本作は映画製作スタッフの原作に対する愛を感じる傑作だった。


■役者がとにかくよい

2つの意味で役者がよい。

-キャスティングがよい

神木くんは、もちろん佐々木蔵之介の島田さん、高橋一生の先生とどれも見た目がばっちりである。
日本映画のキャスティングは、事務所の力とかで、無理やり決められがちで本作もその様な力学が働いたのかもしれない。
しかし、その中でよくここまでイメージぴったりな俳優をキャスティングしたものである。
素晴らしい。

-演技がよい

そして当然の如く、その役者陣の演技がすばらしい。
佐々木蔵之介の胃痛に苦しむ島田さんの姿は迫真である。ドス黒いものが胃の中であばれているというセリフの通りの苦しみ様だった。

「「潔い」のと「投げやり」なのは似ているけど違うんだ!!
」という二階堂の名言を言う染谷くんの姿たもドンピシャである。
このセリフは、前編の終盤で桐山を我に返らせるとても重要なものであり、十分に印象づける必要があった。彼のこの演技はその点で申し分なかった。

何より神木くんである。
後編で川本三姉妹の父親にくってかかる空回り具合、そこから孤立して凹んで帰っていく姿、そして試合に勝って再開するという一連の流れ素晴らしかった

それほどセリフは多くないシーンだけども、神木くんの演技は桐山の心情を十分に物語っていた。

そもそも、本作は役者の演技に対する信頼を感じる。
原作よりも桐山のモノローグは少なであった様に思う。これは、モノローグで説明される心理描写を役者の演技で表現することを選択したからではないだろうか。
そして、その信頼が本作の魅力を大いに高めている。

前後編のバランス
3月のライオンは、大きく分けて桐山の2つの成長を描く物語であると思ってる。

一つは、棋士としての成長の物語。そしてもう一つは、川本家との関わりを通じて、自分の居場所を見つけていく物語だ。

そして画前編では、棋士としての成長を主に描き、後編では川本家との関わりを主に描いていた。
もちろん、後編でも棋士としての見せ場はあった。が、後編は前編と比べて明らかに川本家とのシーンが増えていた。

もし、前編でも川本家との関わりに大きな時間をさいていれば、2時間のなかで棋士たちの死闘を描ききることはできなかったであろう。島田さんと宗谷名人との対決という名場面を描くことは難しかったように思える。

この様にバランスよくエピソードを分配することで、それぞれを一本の映画として高い満足度を得られる作品にしている。

■悪者がいない
この映画を観終わった後には、どの登場人物も好きになる。

新人戦の決勝で桐山が戦う海道は、二階堂を追い詰めたヒールとして最初は描かれる。しかし、桐山との対局を通じて、彼も必死に戦っただけだということがわかる。
桐山を挑発し、周りを敵視していた後藤もまた、病床の奥さんにタイトルを届けようと必死になっていたことがわかる。

そして、神と言われている宗谷でさえも、とてつもないプレッシャーと戦い続け、必死に将棋に向き合う姿が描かれている。

棋士だけではなく、桐山の周りにいる人々が、必死に次の一手を模索していることが、次第に実感できる。
父親と対峙する川本三姉妹、部屋にひきこもっていた歩や、桐山にちょっかいを出し続けた香子たちの必死な生き様が伝わってくる。

本作をみていると制作陣の作品や登場人物達に対する愛が伝わってくる。

■まとめ

マンガ原作の映画は、

・役者がマンガの絵からかけ離れている
・話題性重視のキャスティング
・原作と話がかけ離れている

と言った批判が寄せられる。

本作は、これらの批判がまったく当てはまらない。
個人的には、将棋を指している時の迫力は、原作以上に感じた。

大友監督をはじめとした制作陣が、原作に対する愛があったからだと思う。
本作は、マンガ原作でもおもしろいものがつくれることをあらためて実感する名作だと言える。
原作ファンほどしっかりと観て欲しい。

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