2016年09月01日
【感想】映画「君の名は。」
■都会を細かく描いた効果
「言の葉の庭」でもみられた、都会の遠景描写の細かさには圧倒された。
これには、物語を良くする効果が色々あった様に思える。例えば、三葉が田舎との差に驚くことに説得力を与えていた。
この遠景描写の最大の効果は、2人がなかなか出会うことの困難さと2人が出会ったことの奇跡的なものであることに説得力を持たせたことだと思う。
東京の人の多さや建物の複雑さがあるから、2人が出会うことがとても困難に思えるし、出会ったことが奇跡だということがわかる。奇跡的な出会いだから、神木君だって名前も知らないあった記憶もない女に声をかけてしまう。
■新海誠作品をオススメしていい人
「見えないモノを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ」というあの歌の歌詞に共感する人だと思っている。
非現実なことに対しておもいっきり背伸びをしようとする人の姿を描くことが新海誠作品の最大の特徴だと思う。
その特徴に惹かれるか惹かれないかが、新海誠の作品を好きかどうかを分けると思う。
だが、そういう思いというのはたいてい実らない。だって、見えないものは見えないのだから……。
新海誠の過去の作品、「ほしのこえ」でも、「言の葉の庭」をみても、主人公の思いはついえてしまう。
人間がつくったものを丁寧に描写する新海誠の描く世界ではそれが必然的に思える。
「秒速5センチメートル」が傑作と言わる理由は、切実な思いと現実のギャップが極まる鬱展開が人々の心を話さないからだと思う。
だが、本作は鬱展開で終わらなかった。
切実な思いを描きつつも、その切実な思いをなんとかして叶えて上げた。その点において、本作は、あの名作「秒速5センチメートル」をいろんな意味で超えた作品だと思う。
■余談:宮﨑駿の後継者は細田守じゃなくて、新海誠だと思う。
細田守の作品は興行的にも成功を収めているため、宮﨑駿の後継者なんて言われたりする。
そうじゃなくて、私は、新海誠だと思っている。
細田守は人間の文明とか社会よりも、自然や家族といった原始的・非文明的なものを大切にする。
例えば、「サマーウォーズ」では、家族の絆がコンピューターウイルスが引き起こす世界の危機を救っている。
それは、宮﨑駿的というよりは、高畑勲監督的だ。平成狸合戦ぽんぽことか、かぐや姫の物語といった作品で語られてきたことだ。
宮﨑駿は、例えば、「もののけ姫」で、自然を壊す人間を描いているが彼らの生き方を否定する様な描き方をしない。「紅の豚」だって、戦いに明け暮れる男たちがとても魅力的に描いている。
そして、新海誠は、人間のつくるものを好んでいるし、自然よりも人間が意志に重きをおいて作品をつくっている。
※「言の葉の庭」の特定映像でもそういってます。
2人にはそういう共通点がある。
宮崎駿好きな人にも、新海誠作品は意外とハマるんじゃないかと思う。
※新海誠のその他の作品についての記事はここから