以前、レヴューを書いた「ハーモニー」と同じ著者の作品であり、ハーモニーの前日談を描いたもの。

人間を殺すのは誰か?もしくは何か?

そんな問題を問う作品。

唯物論という考え方があり、この世界を構成するものは、全て物質であり、心や神と言ったものは存在しないというもの。

心=脳の活動 ということが一般的になり、 それが真実味をおびてきた昨今。



それならば、人間は自分の意志で何かを決めるということはあるのか? 

何が自分の食べるもの、着るもの、住む場所を決めて、そして何が人を殺すのか。虐殺なんてクレイジーな事態は何が引き起こすのか。

主人公は、9.11後に組織された高度に情報化された戦術特殊部隊のリーダー。
ユーゴスラビア内戦やルワンダ内戦で起きた様な悲惨な事態の元凶となっている
人物の暗殺を任務とする部隊である。 

主人公は、ある日、いつもと同じように非人道的な行為、
例えば虐殺を行うテロリストの親玉を暗殺にいく任務を遂行することになる。
ただ、一点だけ違うのは、同時にとあるアメリカ人を暗殺することになっていたことだ。

しかし、そのアメリカ人は、暗殺を行う前に逃げていた

そのあとも、同じ様な任務を受けるのだが、また逃げられる。

その男はいったい何者なのか。一体、なぜ政府は彼を殺そうとするのか。
そのミステリーの中に、虐殺をおこすものは、何かという問いが訴えられる。

読むうちに、その問いについてもどんどん考えるようになり、
一体なぜ虐殺が起こるのかを知りたくなり、どんどん引き込まれる。

SF考証もハーモニーほどに、優れているわけではないが、未来の兵士像を描いている。
兵士として痛みを感じない、人を殺しても良心も痛まない様に
調整するナノマシーンが取り込まれているという設定や、
情報をコンタクトの様なデバイスでやり取りする等、 当時としては画期的な設定が描かれている。

上記の様な設定は、メタルギアソリッド4で描かれているので、
二番煎じの様に感じるが、本作の方が先である。
彼は、MGS4のノベライズも担当している。

伊藤計劃は、この作品を10日間ほどで書き上げたという。
恐ろしい。そして、亡くなってしまったことが、非常に惜しくなる……。

ノイタミナでの映画化も決まっている本作。ぜひ、読んでほしい。