【感想】やはり俺の青春ラブコメは間違っている~第6話~【感想】花燃ゆ~第19回~

2015年05月10日

【レヴュー】小説「ハーモニー」

メタルギアソリッド5のノベライズも手掛けた 伊藤計劃 のSF小説である。



ノイタミナにて映画制作ということで、原作を呼んでみた。

圧巻である。

圧倒的に計算された緻密な世界観。提示されるテーマに驚愕する。
攻殻機動隊やサイコパス以上である。


舞台となるその世界は、 身体が個人の物ではなく、所属する国(作中では生府)によって管理される社会。
身体の社会主義化である。

社会主義は、個人の所有権を認めず、全ての 資本は国家のものとして、共有する。
本作では、資本の変わりに、個人の身体を社会全体のものとする。
このことは、作中で、ナチス政権下のドイツを引き合いに出して説明されている。

ナチスは、国民の健康を管理すべく、タバコやアルコールを禁止し、遺伝的な病気の発生を抑えるため、その様な形質をもつものを虐殺。
アーリア民族の優れた遺伝子のみで社会を構成しようという試みも、身体の管理だと本著作では解釈される。

舞台となる社会は、以下の様にナチスドイツの試みを実現している。

身体に「watch me」というシステムがインストールされており、健康状態に関するあらゆる情報を収集し、サーバーに送る。異常があれば、カウンセリングや健康診断、食事の摂取などを勧められる。
「watch me」は健康管理も行い、老いや病気もない。

また、タバコや酒を撲滅し、健康に害のあるものを全て根絶している。

同時に、健康状態はコミュニティーの構成員にも監視される。
社会のあらゆる情報は、構成員が目についているコンタクトの様な装置を通して、表示される。健康状態もしかりだ。
もし、健康状態が悪いとなると、社会的評価が下がり、世間から白い目でみられ、差別される。

ただ、自殺だけはなくならない。自らの命を絶つ、そのことだけは、止めることはできない。そのようなシステムがない。
そこが、本作のポイントである。

主人公キアンは、ミァハという十代の少女の考え、過度な健康管理によって、痛みを覚える権利を喪失しているという考えに同調する。

そして、社会の資産として扱われる、自らの身体を消滅させる=自殺することによって、社会に抵抗しようとするところからこの物語は始まる。

ハーモニーという言葉は、この様な調和している社会のことである。どこまで管理されれば、社会の構成員が調和するのか、一体、どこまで管理されれば、人間であるのか。

実に深い問いを投げかける素晴らしい本だ。

是非、読んでほしい!サイコパスや攻殻機動隊が好きなら絶対お勧めだ。 
※途中、なぞの英語、HTMLタグが表示されるが、無視して読んでいい。最後に、なぜそれが表示されるかが明かされる。 

ハーモニー ハヤカワ文庫JA
伊藤 計劃
早川書房
2012-08-01

 


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sonykichi at 15:23│Comments(0)TrackBack(2)小説 

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1. 【考察】映画「ハーモニー」  [ IT社員の公私混同 ]   2015年12月02日 01:28
原作みていいない人は、意味わかんねーよ!!どうりで、検索からこのブログの原作のレビューに到達する人が多いわけだ。本当に伊藤計画に捧げる作品だよこれは。伊藤計画賛歌です ...
2. 【レビュー】映画「ハーモニー」  [ IT社員の公私混同 ]   2015年12月03日 00:46
まあ、よくできていたと思います。CGとセルアニメの組み合わせが実にうまかったです。あの抽象的でわかりづらい、想像もつかないような世界をよく映像化したなと思います。ラブラ ...

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